×

感想か?データか?|ゲームβテストの本当のKPIとは

現代のゲーム開発において「βテスト」は欠かせないプロセスとなっていますが、その目的を“ユーザーの感想を集めること”に限定してしまうと、本質を見失う危険があります。実際、感想がポジティブだったにもかかわらず、リリース後にユーザーの離脱や収益の伸び悩みが発生するケースは珍しくありません。本記事では、ゲームβテストにおける「本当のKPI」に注目し、感想と行動データの両面から“何を測り、どう改善すべきか”を明らかにします。これからβテストを設計・運用する方に向けて、実例を交えながら実践的な視点で解説していきます。

 2025年09月22日

現代のゲーム開発において「βテスト」は欠かせないプロセスとなっていますが、その目的を“ユーザーの感想を集めること”に限定してしまうと、本質を見失う危険があります。実際、感想がポジティブだったにもかかわらず、リリース後にユーザーの離脱や収益の伸び悩みが発生するケースは珍しくありません。本記事では、ゲームβテストにおける「本当のKPI」に注目し、感想と行動データの両面から“何を測り、どう改善すべきか”を明らかにします。これからβテストを設計・運用する方に向けて、実例を交えながら実践的な視点で解説していきます。

1. ゲームβテストとは何か

ゲームβテストとは、製品版をリリースする前に、限られたユーザーにプレイしてもらうことで、バグやバランス、UXの課題を発見し、品質向上を目指す検証プロセスです。

 

対象となるのは、主に以下のようなポイントです。

ゲームバランスの偏り

・操作性やUIの使いやすさ

・特定の端末での不具合(特にモバイルゲーム)

・ユーザーの離脱ポイントの分析

・ユーザー満足度の初期把握

βテストの実施は、品質と信頼性を担保し、成功するローンチに導くために欠かせないフェーズです。

 

2. βテストの主な目的と誤解

βテストは「プレイヤーの感想を集めること」だと考えられがちですが、実際の主目的は“定量的な問題点の発見と改善”にあります。

 

もちろん感想やレビューも重要ですが、それだけでは判断を誤るケースも少なくありません。例えば、

・「面白かった」という感想が多いが、実際にはステージ3での離脱率が非常に高い

・「操作が簡単」との声がある一方、UIのボタンはほとんど使用されていない

・「キャラクターが魅力的」という評価があるが、一部キャラの使用率が極端に偏っている

これらは、感想と実際のプレイ行動に乖離がある典型的な例です。

 

3. 「感想が良い=良いゲーム」とは限らない理由

ゲームのプレイ体験は、主観的な感情と客観的な行動データで成り立っています。

過度なゲームプレイは問題行動の「原因」ではない。心理的問題の「兆候」だった:研究結果 | WIRED.jp

ユーザーが「楽しい」と感じていたとしても、実はゲーム内で以下のような問題が潜んでいる可能性があります。

・チュートリアルを飛ばして理解が浅いまま進行

・特定のイベントがスキップされがち

・ガチャ機能の利用率が低く、課金導線が成立していない

・難易度の急上昇により途中離脱する傾向が強い

これらの課題は、感想だけでは見えないが、プレイデータにははっきり表れることが多いのです。

 

4. βテストで本当に見るべきKPI

感想に頼るだけではなく、数値に基づいたKPI設計が重要です。代表的なβテスト向けKPIには以下のようなものがあります。

・アクティブ率(DAU/MAU:どれだけのユーザーが継続して遊んでいるか

・セッション時間/プレイ回数:ゲームの没入度を測る

・離脱ポイント分析:どのシーンで離れるユーザーが多いか

・各機能の使用率(ガチャ、バトル、ショップ等)

・課金導線の通過率:ストア遷移、購入完了までの動線

・バグ報告件数・内容:ユーザー視点の技術的課題

・フィードバック投稿率:アクティブユーザーのエンゲージメント指標

これらの指標は、ユーザーの“行動”を通して、ゲームの本当の状態を映し出します。

 

5. KPIに基づく改善の進め方

例1:チュートリアル離脱率が高い

→ 最初の数分間に情報過多 → ステップ構成を簡素化、報酬付与タイミングの見直し

例2:ショップ機能の使用率が1割未満

→ UI配置の問題・アクセス導線が悪い可能性 → ホーム画面にショップバナーを常時表示+限定セール訴求

例3:PvPの勝率が極端に偏っている

→ 特定キャラ/装備の性能が突出 → 数値調整 or 使用制限の導入

 

数字を“見るだけ”ではなく、“改善行動”につなげることが、βテスト最大の価値です。

 

6. 感想とデータ、両方の活用が鍵

データが全てを語るわけではありません。数字の裏には「なぜ?」があります。そこで感想が役立ちます。

 

例えば、

・離脱率が高いステージについて「ボスが強すぎる」との声が多ければ、調整対象が明確に

・ガチャの使用率が低いが、「排出率に不満」「UIが煩雑」との声から、心理的障壁のヒントを得る

定量と定性を掛け合わせることで、より立体的な問題把握と改善が可能になります。

 

7. 成功するβテストの要件

以下の3点を押さえることで、βテストの成果は格段に上がります。

  1. 目的に沿ったKPI設計と収集計画

  2. フィードバックとデータの両輪分析

  3. 改善まで含めたスプリント設計

開発・マーケティング・QAチームが連携して、「数字から見える改善ポイントを最速で実装」できる体制づくりが理想です。

 

ゲームのβテストは、単なるフィードバック収集の場ではなく、「改善の根拠となる行動データを得るための実験フェーズ」です。感想だけでは見えない課題をKPIから浮かび上がらせ、それをもとに迅速に改善を重ねることが、成功するゲームローンチへの近道になります。プレイヤーの声を尊重しつつも、冷静に数字を読み解くことで、感覚ではなく根拠のある意思決定が可能になります。感想とデータ、それぞれの役割を正しく理解し、質の高いβテストを通じて“リリースして終わりではない”ゲームづくりを目指しましょう。

いずれかのサービスについてアドバイスが必要な場合は、お問い合わせください。
  • オフショア開発
  • エンジニア人材派遣
  • ラボ開発
  • ソフトウェアテスト
※以下通り弊社の連絡先
電話番号: (+84)2462 900 388
メール: contact@hachinet.com
お電話でのご相談/お申し込み等、お気軽にご連絡くださいませ。
無料見積もりはこちらから

Tags

ご質問がある場合、またはハチネットに協力する場合
こちらに情報を残してください。折り返しご連絡いたします。

 Message is sending ...

関連記事

 2025年11月11日

SaaS開発者必見!Stripeで始めるサブスク課金システム実装入門:フロントもバックも分かる実践ガイド

SaaSビジネスの根幹は「安定した継続課金」にあります。どれだけ優れたプロダクトでも、請求や決済管理が煩雑だとスケールは難しい。そこで世界的に多くのスタートアップが導入しているのがStripeです。複雑な決済フローをAPIで簡潔に実装でき、フロントエンド・バックエンド双方が扱いやすい設計が魅力です。本稿では、SaaSにおけるStripeを使ったサブスク課金システムの導入方法を、技術とビジネスの両面から紹介します。

 2025年11月10日

成功するSaaSプロダクトには“解約防止戦略”がある:LTV最大化の秘訣をマーケター視点で解説

SaaSビジネスは「契約を獲得すること」よりも「契約を続けてもらうこと」で成長します。顧客が長く利用し、継続的に価値を感じてくれるほどLTV(顧客生涯価値)は高まります。その一方で、解約が多ければ事業はすぐに頭打ちになる。成功するSaaSには必ず、継続を支える明確な解約防止戦略があります。本稿では、その仕組みと実践方法をマーケティング視点でわかりやすく紹介します。

 2025年11月06日

SaaSのUI/UXでユーザーを虜にする3つの心理学的テクニック – 離脱を防ぎ、熱心なファンを育てる設計法

SaaS(Software as a Service)の世界では、機能の多さよりも「どれだけストレスなく、心地よく使えるか」がユーザーの評価を左右します。優れたUI/UXは単なる見た目の美しさではなく、ユーザー心理を理解し、行動を自然に導く“体験設計”の結果です。特に競争が激化する今、ユーザーが「使い続けたい」と感じるプロダクトを作るためには、心理学の知見をUI/UXに取り入れることが欠かせません。本記事では、SaaSのUI/UXでユーザーを虜にする3つの心理学的テクニックを具体例とともに紹介し、なぜそれが離脱を防ぎ、ファン化につながるのかを解説します。

 2025年10月31日

なぜ日本企業のSaaS化は進まないのか?現場文化とレガシーが生む本当の壁

近年、クラウド化やDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する中で、SaaSの導入は企業の生産性を高める有効な手段として注目されています。しかし、日本企業では欧米に比べSaaS化が思うように進まず、「なぜ日本だけ遅れているのか」という議論が続いています。その背景には、単なる技術格差ではなく、長年にわたるレガシーシステムへの依存、稟議や合意形成を重んじる企業文化、そして“現場の声が経営に届きにくい”という構造的課題があります。本記事では、現場のリアルな視点を交えながら、日本企業のSaaS化が進まない理由と、それを乗り越えるための具体的な突破口を探っていきます。

 2025年10月27日

2025年のSaaSビジネス成功法:成長企業が共通して実践する5つの戦略

2025年、SaaS(Software as a Service)ビジネスはもはや単なるクラウドソフトウェアの提供形態ではなく、企業の競争力を左右する戦略的基盤として位置づけられています。デジタル変革(DX)の進展、AIや自動化の普及、そして業界ごとのニーズ多様化により、SaaS市場は急速に成熟期へと向かっています。こうした中で成功している企業には明確な共通点があります。それは「顧客価値を中心に置き、柔軟で拡張性のある仕組みを持ち、継続的に進化を続けている」という点です。本記事では、2025年のSaaSビジネスで成功する企業が共通して実践している5つの重要なポイントについて掘り下げていきます。

 2025年10月20日

ノーコードで変わるアプリとWeb開発の違い|Bubble・Glide活用の実践ポイントとは?

「アプリとWebの違い」は、長年にわたり開発現場で重要な判断基準として語られてきましたが、近年のノーコードツールの進化によって、その境界はますます曖昧になりつつあります。特にBubbleやGlideなどの登場により、非エンジニアでも本格的なアプリやWebサービスを構築できる時代が到来しています。本記事では、アプリとWebの基本的な違いを再確認しながら、ノーコード時代における開発プロセスやチーム編成の変化、必要なスキルについて具体的に解説していきます。